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ポリファーマシー対策をする上で薬剤師が気をつけるべきこと

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たくさんの薬を乗せる手のひら

ポリファーマシーとは何か

「ポリファーマシー」は、最近になって、良く見聞きする言葉ですよね。
日本語で言うと「多剤併用」です。

言葉からのイメージ的には「ポリファーマシー」は、悪いイメージで「多剤併用」は、良いイメージを抱くのは私だけでしょうか?

例えば、多剤併用療法という言葉が使われるものを例示してみます。

抗HIV薬の多剤併用療法は、単一薬剤投与に比して、作用機序が違う多剤併用することにより、薬剤耐性変異ウイルスの増殖を防ぎ治療効果を高めるとして推奨されています。

具体的には、ヌクレオシド・ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、ヌクレオシド・ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、インテグラーゼ阻害剤(INSTI)などの薬剤分類があり、推奨多剤併用として、「NRTI2剤+INSTI1剤」「NRTI2剤+rtvを併用したPT1剤」、「NRTI2剤+NNRTI1剤」が初回治療として推奨されています。
参考抗HIV治療ガイドライン2018年3月

また、抗がん剤に関しても同様です。

具体的には、術後アジュバント治療として推奨されているmFOLFOX6+BV療法は、レボホリナート+フルオロウラシル+オキサリプラチン+ベバシズマブの4剤を併用する多剤併用療法です。
参考J Clin Oncol.26(21):3523-9(2008)

上記何れの治療法でも、まずは、各薬剤が単剤でHIVウイルス、大腸がん細胞に有効であることが治験により検証された上に、併用療法の大規模な臨床研究が行われ、有効性、安全性、投与量、投与方法のエビデンスが確立されたうえで多剤併用されていることです。

このような治療法には、決してポリファーマシーという言葉は使われません。

一方、「ポリファーマシー」が使われるようになったのは、日本老齢医学会が2005年に出した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2005年」ごろからではないかと考えます。

この「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」は2015年に改訂され、多剤併用療法に対する薬剤師の役割として、「かかりつけ薬局」の重要性も指摘しています。

また、2016年度診療報酬改定で厚生労働省が診療報酬を新設した「薬剤総合評価調整加算(入院時)」「薬剤総合評価調整管理料(外来受診)」などで、「6種類以上の内服薬が処方された患者に、退院時に2種類以上減らした場合」の加算の6種類の根拠も、このガイドラインがもとになっているようです。

なぜポリファーマシーが起こるのか

ポリファーマシーが起こる要因が下記の資料に端的にまとめられています。

これは、2017年4月17日に厚生労働省が開催した「第1回高齢者医薬品適正使用検討会」の資料1に「高齢者に対する薬物療法の現状」として、以下の列記です。

  • 腎・肝機能の低下、体成分組成の変化による薬物動態の変化
  • 合併症による多剤投与(ポリファーマシー)の増加
  • 多剤投与(ポリファーマシー)による副作用の増強、薬物間相互作用の発現(精神、麻薬など)
  • 医薬品の情報提供は単品単位で行われ、複数薬剤と包括した注意喚起が行われていない
  • 飲み忘れ等、服薬管理の必要性が高い患者の存在など

医薬・生活衛生局安全対策課「第1回高齢者医薬品適正使用検討会 資料1

合併症の増加に伴うポリファーマシーは、確かなことです。

私も、持参薬管理センターなどで、高齢者の分厚いお薬手帳を見ていると、複数の診療科の医師がそれぞれに薬剤を上乗せし、患者さんによっては、3か月間の間に10剤は裕に超えるお薬手帳シールが貼られています。

同種同効薬も見受けられるので、患者さんに1剤ずつ、
「この薬はどうして処方されたのですか?」と質問すると、
「便がやわかかっったから(整腸剤粉薬)」という答えが返ってきます。

「効果はありましたか?」の質問に、
「口の中に広がって、飲みにくかった。飲んだ後、お茶を何回も飲まなくてはならず次から飲むのをやめた。効いたかどうかわからん」

その3日後に、他のクリニックで「下痢止め(カプセル)」が処方されているので、
「この薬は、どうしてもらったのですか」の質問に、
「便が柔らかい日が続いていたし、丁度、血圧の薬をもらいに行った序に、クリニックの先生に 『下痢している』と言ったら、『それでは、下痢止め出しときます』と言われてもらいました」 

「飲まれて効果はありましたか?」の質問に、「1回飲んだら、今度は、数日便が出なくなったのでやめた」の返答でした。

この問答は、持参薬管理センターで出会う会話としては、日常茶飯です。

薬の種類が、下痢止めの例でしたが、「下剤」「痛み止め」「睡眠薬」など様々です。

問題点は、下記3点にあるのではないでしょうか。

  1. 患者さんが、ほぼ同じ愁訴を複数の医師に訴えていること。
  2. 医師は、お薬手帳などの確認なし(確認したかもしれないが、不十分)に簡単に処方すること。
  3. 多くの場合、患者さんは、医師に対して服薬していないこと(アドヒアランスの悪さ)を言わず、従順患者であることを示すこと。

「なぜ、ポリファーマシーが起こるのか」は、合併症の問題というよりは、「安易な薬の処方」ではないかと思います。

どのようなデメリットがあるのか

最大のデメリットは「有害事象の増加」であることは間違いないです。

前述したように「副作用の増強」、「薬物間相互作用の発現(精神、麻薬など)」「医薬品の情報提供は単品単位であり、複数薬剤と包括した注意喚起が行われていない」は、最も懸念されるところです。

しかし、これも、患者さんが投薬された薬をきちんと飲んでいることが前提です。

高齢者でなくとも、10剤以上も飲むべき薬があれば、本当に正確に忘れずに内服できるのでしょうか?
私自身も、たまに経験するのですが、昼頃になって「あれ、朝きちんと薬飲んだっけ?」と不安になる経験をされた方も多いのではないでしょうか?

持参薬管理センターで「入院の時に、お家にある薬を全部持ってきてください」などとお願いし、入院の時の持参薬を見て唖然とすることは、ほとんどの病棟薬剤師が経験するところです。

余っている薬の多いことと、今飲んでいる薬も、残っている薬剤数がバラバラであることは、その薬を整理して継続する薬と中止する薬を仕分けする業務負担を多大なものとします。

これと同時に、医療資源の無駄遣いを実感します。

ポリファーマシーの招く悪のスパイラル(多剤併用→服薬不履行→残薬の増加→資料資源の無駄→医療費の高騰)は、ポリファーマシーによる副作用の懸念と同様、もしくはそれ以上に問題であると感じています。

ポリファーマシー対策をするうえで薬剤師の役割は何か

不要な薬物療法を回避する良法は、「薬剤投与の一元管理」であると考えます。

手段としては「お薬手帳」の有効利用が手っ取り早いです。
しかし、現在の「お薬手帳」の利用の仕方はまだまだ甘いです。

「単にシールを貼っているに過ぎないもの」、「アドヒアランスの状況が記録されていないもの」、「必ずしもすべての薬剤が記録されているわけではないもの」、「携帯が必須ではないな」どの運用状況では、正確な情報が把握できません。

これを、補う手段として、お薬手帳に基づいた、対面での情報収集と「かかりつけ薬剤師」として継続した指導を行うことです。

医薬分業となり、かなりな年月が経過していますが、期待していた「かかりつけ」と言われる薬局や薬剤師は、増えていません。

この意味で、ポリファーマシーの加速の一因として薬剤師側の責任も大です。

今一度、医療人としての薬剤師の役割を再認識するときが来ていると考えています。

かかりつけ薬剤師として、いつも患者さんを観察することによって、患者さんの変化に気が付き、副作用の発見、薬剤の無効の判断、つまり「薬物療法の適正化」に寄与できるはずです。

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