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薬剤師が起こしうるミスの原因とミスに正しく対処するための方法

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赤いチェックをつける白衣の男性

調剤薬局、病院などで薬剤師が行う仕事は、患者さんの命に直接関わるものです。
ミスを起こさないように、慎重に仕事をしなくてはなりません。

でも人間は、どんなに気をつけていても、ミスを起こしてしまう生き物です。
ミスを起こさずに仕事を続けるなんてことは、無理だと思った方が良いでしょう。

大切なことは「ミスを減らすこと」「ミスが起きた後の対処方法」です。
そこで、薬剤師が起こし得るミスの内容や、その対処方法などをご紹介します。

調剤過誤が重大な事故とならないように、工夫をしておくことが重要です!

調剤におけるエラーの種類は?

薬剤師の業務におけるミスの種類は、薬剤師会によって3つに分類されています。
一般的に薬剤師の調剤や服薬指導におけるミスは「調剤過誤」と呼ばれていますが、そのほかに「調剤事故」「ヒヤリ・ハット事例(インシデント事例)」という言葉があります。

調剤事故

調剤に関連した何らかのミスにより、患者さんに健康被害が発生したものであり、薬剤師の過失の有無は問わないとなっています。
処方せんの内容にミスがあった場合なども含まれます。

調剤過誤

調剤事故の中で、薬剤師による過失があり起こったものとされています。(調剤過誤は、調剤事故の一部ということです)
これは例え調剤した薬の内容が正しくても、薬剤師による説明や服薬指導の内容に誤りがあり、健康被害が生じた場合も含まれます。

「ヒヤリ・ハット事例(インシデント事例)」

ミスが生じたものの患者さんに薬が渡る前に気が付いた、もしくは服用前に気が付いた、服用したが健康被害はなかったなどの場合は調剤事故とは扱われません。
「ヒヤリ」「ハッ」とした出来事のことを呼び、調剤以外の分野でも使用される言葉です。

調剤過誤の事例

調剤エラーの中で、薬剤師のミスによる健康被害が生じてしまった「調剤過誤」の事例をいくつかご紹介します。
起きてしまった調剤過誤の内容を知り心に留めておく、または似たミスをしないように工夫をすることで、同様なミスを防ぐことに繋がります。

ワーファリンの用量ミス

処方内容は「ワーファリン1mg1錠、0.5mg1錠」のところを「ワーファリン1mg1錠、5mg1錠」で調剤。
ミスに気が付かないまま患者さんは1か月ほど服用し、その後死亡。

一包化でのミス

「アーチスト錠1.25mg」の処方を「オイグルコン錠1.25mg」で一包化薬。
患者さんは低血糖で入院。
2つの薬は形状が類似。一度分包した薬を分包機のカセットに戻す際のミスと推測。

力価計算のミス

ペリアクチン散1%を1.2mg(力価)を一包で調剤すべきところ、製剤量で1.2g秤量し一包に。
10倍量の交付。

患者は4歳であり、20時間眠り続ける。
後遺症はなし。

似た名前の薬のミス

「ヒューマログミックス50注ミリオペン」の処方のところ「ヒューマログ注ミリオペン」を2回連続交付。
1か月半ほど間違った注射薬を使用し、血糖コントロール不良と顔面神経痛となる。(その後治癒)

計量によるミス

「酸化マグネシウム1g/分3」の処方のところ「酸化マグネシウム3g/分3」で調剤。
患者から軟便になったと言われるまで、調剤ミスに気が付かず。

調剤事故の背後にひそむヒヤリ・ハット

上では、健康被害が生じてしまった事例をご紹介しましたが、実は調剤ミスの中で健康被害が生じたのは全体の1.6%、健康被害の有無が不明なもの1.7%と併せても3.3%にしかなりません。
つまり健康被害が起きた調剤ミスはごく一部であり、ほとんどは健康被害がないミスということです。

それはつまり「健康被害がなければミスをしてもOK」ということではなく、「調剤事故の数の分だけ、その背後には膨大な数のヒヤリ・ハット事例がある」ということです。

ハインリッヒの法則をご存知ですか?

1件の重大事故の背後には29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件のヒヤリ・ハット事例があるという法則です。(1:29:300の法則)

ハインリッヒの法則図

ハインリッヒの法則 - Wikipedia

この法則を調剤ミスで例えるなら、ワーファリンの事故のような死亡事故が1件あったとしたら、血糖降下薬の事故など死亡には至らないものの、健康被害が生じた事例が29件あり、錠数ミスなどヒヤリ・ハット事例が300件あるということですね。

薬剤師会が調剤事故やヒヤリ・ハット事例(インシデント)の事例を取りまとめた報告数でも、だいたい1:29:300の法則に当てはまっているようです。

この法則において大切なことは「健康被害のなかったヒヤリ・ハット事例を減らすことが、調剤事故を減らすことにつながる」ということです。

そのため重大事故を知ることも大切ですが、日々起きているヒヤリ・ハット事例の原因を探ることも欠かせません。

調剤ミスが起きる原因

間違えようと思って間違える人なんていません。
薬剤師は薬を扱う仕事なんですから、みなさん慎重に調剤をしています。

それなのに何故ミスは起きてしまうのでしょうか?
よくある原因をいくつか見てみましょう。

忙しすぎる

どんなに注意していても、忙しく時間に追われて仕事をしていれば注意力が散漫になります。
処方せん枚数に対して薬剤師が不足しているときには特に注意が必要です。

疲れている

残業が続いている、休みが十分に取れていないなど疲労が溜まっている場合にはミスが起きがちです。
プライベートで旅行やアウトドアをした場合や、深酒をしてしまった場合にも注意力が落ちやすいので、仕事に差し支えない程度に楽しみましょう。

人間関係がよくない

仕事の基本であるホウレンソウ(報告・連絡・相談)は、調剤業務においても大切です。
人間関係が悪く十分に情報をスタッフ間で共有できないと、ミスが起きやすくなります。

仕事に慣れてきたころ

よくあるミスをしがちなタイミングが、仕事に慣れてきて悩むことなく作業をこなせるようになってきたころです。
慣れから手順をよく確認することを怠り、それがミスの原因になります。

事故を防ぐ体制が整っていない

「人間はミスを起こすもの」という前提のもと、ダブルチェックなどミスが起きてもそれをすぐに発覚させるシステムを整えておく必要があります。
個人が注意すれば済むというものではないですよね。

調剤過誤を起こしたばかり

過誤を起こした直後は注意力が高まっていると思いがちですが、実はミスを引きずることで注意力が散漫になってしまうんです。

ミスをしないためにも、気持ちの切り替えがとても大切です。
そして、ミスが起きてしまった後の対処方法が、もっとも重要になります。

ミスが起きてしまった場合の対処の方法

患者さんにすでに薬が渡っている場合

まずはミスが発覚した時点で、患者さんに薬が渡ってしまっている場合です。

このケースでは、すぐに患者さんに連絡を取ります。

薬をまだ服用していなければ服用せずに、正しい薬と交換してもらいましょう。(薬剤師がご自宅まで交換に伺います)

もしすでに服用してしまっていた場合には、すぐに服用を中止してもらい、健康被害の有無を確認してください。
さらに処方医に調剤過誤の報告を行い、その後の処置について指示を仰ぎましょう。

過誤薬を服用してしまったとしても、1回であれば重大事故にはならないことがほとんどです。
重大事故を防ぐためには、重大事故に繋がりやすい糖尿病薬、向精神薬などの数量を、閉局後に毎日確認するのがベストです。

患者さんに薬が渡される前の場合

次にミスが発覚した時点で患者さんに薬が渡っていない場合です。

これは当然健康被害が生じていないので、ヒヤリ・ハット事例になります。

ヒヤリ・ハット事例は「患者さんに渡る前で良かったね~」と簡単に済ませてしまいそうになりますが、その積み重ねが重大事故につながることをシッカリと自覚する必要があります。

ヒヤリ・ハットの内容をスタッフ間で共有できるメモなどに残し、同じミスが起きないように気を付けます。

そして大切なことは「ミスを起こした薬剤師を過剰に責めたり怒ったりしないこと」です。
もちろんミスが続く場合には、管理者から注意することは必要です。

ただダラダラと怒ってプレッシャーをかけることは、ミスを起こした薬剤師の精神状態を不安定にさせ、注意力を低下させます。
ミスを起こさないように、起こさないように…とビクビクしながら仕事をすると、何故かミスをしてしまうものなんです。

ヒヤリ・ハットを起こしてしまった場合には「重大事故にならなくてよかったね、次から気を付けよう、次からはミスをしないようにこうしてみよう」程度に留め、ミスをした本人も十分に反省をした後は気持ちをスッキリと切り替えて仕事に臨むようにしましょう。

まとめ

ミスをしてしまい、落ち込んでいる薬剤師がいるとしたら、過剰に自分を責める必要はありません。
どんなに気を付けていても、ミスを完全に防ぐことはできないものです。

大切なことはミスに対応できる準備を整えること、そしてミスが起きた際に、正しく対応することです。

まずは仕事量が適正か、過誤を防ぐための体制は整っているかなどハード面を確認してみましょう。
それが問題なければ慣れによる手抜き作業をせず、万が一ミスをしてもそれを引きずらずに前向きに仕事をすることでミスの回数は減らすことができます。

自分だけではなく職場の薬剤師みんなと、ミスを減らすための工夫を共有するのが一番良いですね。

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